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ところがどうでしょう②

藤田美穂(ピアノ講師) 2017年8



カワイの電子ピアノはミュージシャンに とても評判が良いと聞き、ちょっと嬉しくなりました。私も電子ピアノをフル活用しており、購入して本当に良かったと思っています。
でも電子ピアノを弾くたびに、どうしても 思うような音色や、微妙な音量が出せず違和感を覚え、小さなストレスを感じてしまうのも事実です。
何の楽器でも、はじめに出会うのは電子ではなく本物の楽器であるほうが音色も、楽器との付き合いも深くなるのかもしれません。

ところがどうでしょう

電子ピアノでも、グランドピアノに負けない、とても深い、気持ちの良い音楽を演奏する先生がいます。
また、ある電子オルガンの先生は、私が弾く短いフレーズを横から「こんな風に弾いたら」と全然違う音色で弾かれます。タッチ機能の効かない音色(おんしょく)なのに音色(ねいろ)が変わるのです。
限界があると思われがちな電子楽器ですが、音楽する心があれば無限に広がっていって…
やっぱり音楽は楽しいですね。



ところがどうでしょう①

藤田美穂(ピアノ講師) 2017年4



学生の頃、先生に「できるだけたくさん演奏会に行きなさい」と言われていました。音楽をCDで聴くのもいいけれど、生での演奏から受けるものは全く違うという事でした。
共鳴するという事もそのひとつかもしれません。アンサンブルをするときに、自分の楽器と違う楽器が共鳴しているという感じは、物理的にも感覚的にも気持ち良くわかるときがあります。たとえ演奏していなくても聴こうとしている人と演奏している人が共鳴しあって、ひとりで弾いている時とは違う唯一の音楽になり感動に繋がるのかもしれません。また聴く側は、曲への知識などない場合でも、演奏への期待や、知らず知らずのうちに音楽を受け取ろうとする力が働いて何かを感じたり感動したりするのだと思います。

ところがどうでしょう。

家でダラっと茶碗を洗っている時に、つけっぱなしのテレビから流れてくる全く知らない曲に号泣する時があります。生演奏でもなく、聴こうとする力ゼロでも突然くる感動もあって、音楽は楽しいですね。



想像と創造

松谷美穂(ピアノ講師・幼児グループレッスンリーダー) 2016年5



想像と創造。“そうぞう”という同じ音の言葉であり、なかなか深い関係にあるこの言葉たち。今回は音楽活動をする上での“そうぞう”について考えます。演奏に特化すると、まず曲を創造するためにはその曲に関しての想像は不可欠です。この曲をどう演奏する?と迷った時はまずその曲が出来た背景や環境、人々の気持ちを想像します。そしてその想像を元に曲の音色や組み立てを創造していく。とても楽しい時間です。私は講師という立場から常に、「この曲はどんな曲だろう?」「どんな気持ちかな?」と生徒さんに問いかけます。もちろんその曲を音楽的に演奏してほしいという思いが強いのですが想像するということは人の気持ちを考えて行動したり、発言したりすることに繋がっていくのではないか?と少々大きなテーマを掲げているのです。音楽を通してそんなあたたかい事が学べたら素敵ですよね。音楽で溢れた世界になりますように!





聞くと聴く

松谷美穂(ピアノ講師・幼児グループレッスンリーダー) 2016年4



“聞く”ことはとても簡単です。しかし“聴く”ことはどうでしょうか?“きく”について調べてみると人の話をきくことについてはたくさん書かれてありますが、私は音をきくということについて考えます。日常生活の中には様々な音がありますね。何もしなくても聞こえてくる車の走る音、電車が通り過ぎる音、人の歩く音など。私は子供達とのレッスンの中で“聴く”ことを大事にしています。「今何の音が聴こえる?」と言ってシーンとした空間を作ります。返ってくる答えは「葉っぱが風で揺れてる音!」や「エアコンの音!」など…様々ですが“聞こえた音”ではなく“聴いた音”という事に大きな意味があると思うのです。私はグループレッスンに多く関わっていますが、この“聴く”ということの大切さを子ども達と一緒に体感しています。“音を聴こうとする”その姿勢は“相手を理解しようとする”という事に通ずるものがあるのではないでしょうか?





スコットランド民謡

井上七星(ピアノ講師) 2016年2

スコットランド民謡といえば、昨年NHKの連続テレビ小説「マッサン」で話題になりましたね。スコットランドはイングランドと争った歴史があり、美しいメロディーの背景には、絶望の中でも未来に希望を託したいという願いが込められて作られたのではないかという見解もあるようです。そのように思って聴くと、なるほど…という気がします。
祖父は10年程前に亡くなり、祖母も先月99歳で生涯を閉じました。静内の町に行くことも滅多に無くなりそうですが、亡くなった祖父母も毎日このメロディーを聴いていたのかなと思うと、また感慨深い気持ちになるのでした。





特別な一曲

井上七星(ピアノ講師) 2016年1

♪この曲を聴くと涙が出てしまう…という曲が、どなたにも一曲はあるでしょうか。私にとってそれはスコットランド民謡の「アニーローリー」オルゴールバージョンです。幼い頃から、夏休みになると北海道の静内(しずない)という町にある母の実家で過ごしていました。今はどうかわかりませんが、当時は17時になるとこの曲が町から流れていました。外で遊んでいれば「あぁもう帰らなきゃいけないな」と思い、あと何日ここで過ごせるのか…と、子どもながらに感傷に浸ったものです。今でもふと耳にすると、夕焼け空や景色、風、空気、夕飯のにおい、子どもの時にしか持っていなかった気持ちのようなものが一度に押し寄せて、何とも言えない切ない気持ちと懐かしさでいっぱいになります。





マリンバについて②

吉崎りえ(マリンバ講師) 2015年12

楽器としては、まだ若干110歳程度と歴史の浅いマリンバですが、ルーツは人間とほぼ同じと考えれば、優しさや激しさ・繊細さや力強さをもつマリンバの音色が、私達の心にストレートに響いてくる事は容易に理解できます。オリジナルの曲となると現代音楽が主になりますが、クラシックのアレンジやポピュラー等、どんな曲を演奏してもその生き生きとした音色には「木の温もり」が感じられます。素敵な楽器です。
宣伝ではありませんが、とある料理番組のテーマソングや「上を向いて歩こう」のイントロ、i-Phoneの着信音など、皆さんの身近なところに、マリンバの音はたくさん使われています。マリンバをより身近に感じ、興味を持って頂けたらと、マリンバのことを少しお話させて頂きました。どこかで「マリンバ」と言う楽器の名前を聴くことがありましたら、こんな他愛もないお話を思い出して下さったら幸いです。





マリンバについて①

吉崎りえ(マリンバ講師) 2015年11

「樹の温もり」と言う言葉から、皆さんは何を想像しますか? 木のぬくもりを感じる家・木のぬくもりが伝わる家具、それから木のぬくもりを感じる空間・・等など。「樹の温もり」とは、人間の五感に刺激や安らぎを与えてくれる自然からの贈り物ではないでしょうか。そんな樹の温もりをストレートに伝えるアコースティックな楽器のひとつに‘マリンバ’があります。 
人間は道具を使い始めた頃、木片を叩いて音を伝えることも始めました。長い年月を経てその木片に響きを求めるようになり、音程を作り、やがて木琴という楽器の原型が世界中の色々な所で発祥しました。19世紀後半から急速に発達したマリンバは、その後百年の間、更に進化を続け、現在では5オクターブ前後の音域を持つ大型楽器としてほぼ完成と言えるまでになりました。





拍子とリズム②

馬男木理愛(ピアノ講師) 2015年10

「数えながら弾く」ということは、とても難しかったようで、拍子が音符と同じタイミングになってしまうことがよくありました。同時に2つのことをするのは難しいといわれたので、数えながら弾く練習はやめ、まずは「1と2と…」と数える練習に変更しました。「1と2と3と4と5と6と7と…」とずっと数えて行く事は出来ても、特に三拍子の「1と2と3と」を何度も戻って数える事が難しい様子でした。今になって考えてみれば、戻りながらかつ先に行くこの数え方も特殊なので、難しかったと思います。これが出来てから数えながら弾く練習に戻りました。これも慣れるまで数か月かかりましたが、努力の甲斐あって、最近はスムーズに出来るようになりました。普段私たちは譜読みをする際、拍子をとりながら音の高さ、長さを同時に見ていることが実はそれがとても難しいことなんだと思い知らされました。
この練習方法により、最近は一曲を完成させるのに数か月かかるようになりましたが「苦労した分出来た時の喜びが大きなものになるし、いつまでも忘れずに弾けますね。先生につけてよかったです。」と生徒さんに笑顔で言われたときは本当に嬉しかったです。この達成感を味わえるのは音楽の醍醐味だと思います。又、講師として生徒さんから教えていただく事も沢山あり、生徒さんと一緒に達成感を共有出来る事が講師の醍醐味だと思います。生徒さんの頑張りを見てこれから私も、もっと頑張ろうと思いました。





拍子とリズム①

馬男木理愛(ピアノ講師) 2015年9月

最近、大人の生徒さんが入会されることが増えました。20代、5、60代から70代、なんと80代の方までいらっしゃいます。いくつになっても、「音楽をしたい!」と思えることは素敵なことだと思います。今回はその中から、70代の生徒さんのことをご紹介します。
ピアノを習い始めて今年で5年目になるその生徒さんは、昔から習ってみたかったそうなのですが、子ども時代には戦争や貧乏な時代でそんな余裕もなかったそうです。「生きていくために兎に角必死だった」ということを聞いたときは、「ピアノを習いたかったらすぐに習える今の時代はとても恵まれているんだな」としみじみと思いました。その時代を生き抜き、裕福な時代にしようと頑張ってきた方々のおかげで、私たちは自由に音楽を楽しめる環境があるんだと思うと、感謝の気持ちでいっぱいになります。

今から5年前に念願だったピアノを習い始めた70代の生徒さんを私が2年前に引き継いだ当時は、指番号・音の高さを中心に覚えていたようで、拍子やリズムはかなり軽視されていました。この生徒さんの音符の長さの考え方は「遅い」か「速い」かでした。私はできるだけ楽譜に忠実な演奏をしていただきたいと思い、拍子が大切だということ、音符や休符は種類によってそれぞれ長さが違うことを説明し、「1と2と…」と拍子を数えながら弾く練習を始めました。





音楽の面白さ②

武藤やよい(ジャズピアノ・ドリマトーン講師) 2015年8月

♪作家の吉本隆明さんがどんなことでも毎日10年続ければモノになると言っていました。これは『音楽』にも言えることです。“毎日”がポイント。やったりやらなかったりでは足し算にしかならない、毎日やる事で掛け算となって10年もすれば何とかモノになるそうです。
“好き”で“面白く”ないとできないことです。

歴史を知ると『音楽』がさらに面白くなると思っています。
クラシック音楽の歴史と数百年経ってジャズが辿った歴史が同じような道を辿っていたり、また天才達の出現と偶然にも同じ時期に新しい理論が生まれた事により歴史が大きく変わったり、音楽家の良くも悪くもその人生がなければその『音楽』が生まれていなかったり…興味深い話がたくさんあります。偉人達の功績とミラクルの上に今の『音楽』があると思うととても大切でずっと後世まで伝えていかなければならないと思います。

『音楽』を学ぶことには大切なものがたくさん詰まっています。出来た時の達成感や何かを発見した時の喜び、『音楽』を通して自分自身を知ったり…だから面白いし、続けていけるのだと思います。これから10年、20年と自分の年齢と共に見方が変わったり新たな発見があると思うと年を重ねることもまた楽しみとなります。

※『音楽』の部分は『芸術』『伝統』『農業』なんでも当てはまりそうです。





音楽の面白さ①

武藤やよい(ジャズピアノ・ドリマトーン講師) 2015年7月

若い頃、先輩からジャズが上手になりたいのならCD一枚分耳コピ(音楽を耳で聞いて演奏を再現したり楽譜を起こす作業の事)するといいよと言われたことがあります。今は手軽で便利な再生速度をゆっくりして聴けるアプリなどがあるので短時間で正確にコピーをすることが出来ますが昔はそんなアプリもなくただひたすら再生→一時停止を繰り返し耳コピをしたものです。
ただ音をコピーするだけではなく演奏者の微妙なタッチや音を出すタイミング、息遣いなど集中し気持ちを揃えて辿っていくと演奏者の性格ややりたかったことなどが感じられるような気がします。そしてどれだけスゴイことをやっているのかを知り感動します。

書の世界にも『臨書』というものがあってお手本を真似、文字が作られていくプロセスを追体験し腕を磨いていくそうです。
芸術の世界はとにかく模倣をすること。真剣に真似ることでそこから色んなことを感じ学び次から次へとそれ以外の世界にも繋がっていく…
そういうところに面白さを感じます。





あの歌この歌②

星野明子(ピアノ講師) 2015年6月

♪あわてんぼうのサンタクロース♪の続きですが、作詞家は吉岡治さんです。「天城越え」「真っ赤な太陽」、また日本のサッカーブームに一役買っているに違いない「キャプテン翼」の主題歌を作詞されています。その吉岡治さんは♪おもちゃのチャチャチャ♪に補詞で関わっておられます。その子ども達の大好きな♪おもちゃのチャチャチャ♪の作詞家は野坂昭如さんです。「火垂るの墓」の作者で、このお話はご自身の戦争体験を元に書かれたそうです。この方は作家としてだけでなく歌手・タレント・政治家など多彩な面をお持ちで、とても味のあるキャラクターとしても知られています。そしてこの曲の作曲家は、昨年お亡くなりになった越部信義さんです。「世界ふしぎ発見」のオープニングテーマや「サザエさん」の挿入歌、「みなしごハッチ」「マッハGoGoGo」など懐かしいアニメの曲も数多く作られました。また40年にわたり「おかあさんといっしょ」に携わっておられました。曲調から温かいお人柄がしのばれます。
他にも調べれば調べるほど、たくさんの繋がりを見つける事が出来ました。同じ人が作ったとは思えないギャップを感じたり、その人特有の音を感じたり…。
元はといえば、レッスンでよく歌う♪こぶたぬきつねこ♪や♪一ねんせいになったら♪が、私の大好きな「男はつらいよ」のテーマを作曲した人と同じ人だ!!という事に気がつき感動したのでした(山本直純さん)。しかも調べてみると「8時だよ全員集合」も作曲しておられ、瞳孔が3倍は開くほど感激した覚えがあります。
こうやってテレビ番組やCM曲、演歌やアニメなど各分野で活躍してある作家の方々が、純粋に子どものための作品を作ってきたという事は本当に素敵な事だなぁと思います。
もちろん童謡を専門に作っている方もたくさんいらっしゃいますが、ギャップがあればあるほど、この方々の子ども時代はどんなだったのだろう…と思いを馳せる事が出来て楽しいのです。
童謡は広い意味でいえば「わらべうた」なども含まれますが、明治時代、児童雑誌『赤い鳥』の創刊に伴い北原白秋や山田耕作ら一流の文学者や音楽家達による童謡運動がおこった事により、子どもの事を考えた質の良い作品がたくさん作られるようになったそうです。
そうして現在も素敵な童謡が次々に生み出されています。時代とともに消えていくものも多いですが、子ども達の事を大切に思う心はいつまでも消えないのだなと童謡を通して感じます。子どもの情緒を育てるだけでなく、大人にとっても懐かしさや切なさ、色んな感情を持つ事の出来る童謡。童謡を歌っている時間は、ささやかだけれど幸せな時間だなと思います。





あの歌この歌

星野明子(ピアノ講師) 2015年5月

子供の頃に何気なく口ずさんでいたあの歌…きっとどなたにも心に浮かぶ音楽があるのではないでしょうか。
学校で習ったばかりの童謡やテレビで流行っていた曲など、私自身よく人目もはばからずに大声で歌っていたものですが、大人になり特に童謡の素晴らしさが胸にしみるようになってきました。
それぞれの内容の素晴らしさは言うまでもないのですが、作詞家や作曲家について調べていくと意外な繋がりを沢山発見する事ができ、また違った楽しみ方が増えました。
有名なところからご紹介しますと、童謡 ♪あわてんぼうのサンタクロース♪ を作曲したのは、あの国民的ドラマ「裸の大将」の主題歌 ♪野に咲く花のように♪ の作曲家・小林亜星さん。かつて俳優としても活躍され頑固親父を演じておられたせいか、私のイメージはいかにもコワイおじさん(失礼!)だったのですが、どちらの曲も可愛らしく優しさとユーモアに満ち溢れています。ちなみに小林亜星さんは某コンビニエンスストアのCMソング ♪あなたとコンビニ〜♪ も作曲されてあり、お店に行くたびあのお顔を思い出して何だかニヤニヤしてしまいます。





出会ってしまった!<後編>

諸冨善美(声楽・ヴォーカル講師) 2015年4月

 ごく普通にしているつもりだが、『芸術家は違うよね~』と言われて、反論したい気持ちを抑えることがある。私の周囲には、今でも音楽で生活している友人、とうの昔にやめてしまった友人もいる。確かに個性的な人だらけだが、みな自分は普通だと思っている。
 田舎町にもクリスマスの賑わいが騒がしくなってきた頃、我が家でも、私の声と下手なピアノの騒音で、家族が困り始めていた。それでも「時間がないから、叱るのは合格してからね!」と懇願しつつ、練習に明け暮れた。レッスンには遠くても自力で通い、一日中音楽と格闘する私を見て、最後には家族も応援してくれたようだった。興味を持ったらまっしぐら、絶対に声楽科に進みたいと思った。
 不意に出会った声楽を追いかけて、私は地元の短大を卒業後、東京の大学に編入。大都会は才能豊かな美男美女であふれており、さらにはミンクをはおり、ベンツでご通学・・という方もいらっしゃる世界。違いすぎる・・仲良い友人は東京に残ったが、私はさっさと戻り、しばらくは学校の先生に納まった。
 ところが「声と先生、どちらを取りますか」というお医者さんの一言で、学校をあっさり退職。イタリア帰りの声楽家を師匠として、一から声楽を学びなおすことにした。先生の厳しいレッスンのおかげで、いつの間にか私はコンクールで受賞し、コンサート、演奏、音楽教室の仕事をするようになっていった。
 少し前、私はとあるホテルで、グランドハープの音色にすっかり魅せられた。指のタコを見て、まっしぐらな性格に苦笑しつつ、現在ハープと格闘中である。まだ初級だが、弾き語りをするのがささやかな夢。思えば、どんなときも、大好きな歌に支えられ、乗り越えることができた。今後はハープという新たなパートナーと共に、仲良く歩こう。次なる出会いを楽しみにしながら。






出会ってしまった!<前編>

諸冨善美(声楽・ヴォーカル講師) 2015年3月

「日本人は、早くから進路を決めすぎる!」オーストリア留学からのんびり戻ってきた友人が言っていた。日本しか知らない私は「?」と思っていたのだが、彼女は大学を卒業して6年間、十分に自分の適性を見つけることができた様子だった。あれから、○○年が過ぎ、彼女は今もなお、生き生きと過ごしている。
高校時代、毎日が『詰め込み』で、自分の進路を十分に考える余裕がなかった。たった16歳くらいで、進路を決めなくてはならないなんて。『文系か、理系か』・・迷った。家族総理系の我が家で、文系を選んでしまったら、毎日の『詰め込み』生活に加えて、『家族会議』の時間も避けられない。自由な時間を何としても確保したい!という理由で、あっさりと理系を選んでしまった。
 当然、理系は理数科だらけの授業。何とつまらないことか!クラスメイトに聞いてみた。「ねえ、授業おもしろいの?」「当然!」「え?」みな、授業が楽しいらしい。私は自分の選択がかなり間違っていることに気づいた。もう高校二年生の夏休みだ。
 当時はまだ歌番組が全盛期を誇っており、アイドルだけでなく、実力派歌手も番組で美声を披露していた。クラシック歌曲もコマーシャルや連続ドラマで取り上げられたりしていた。そんな中、芸術科目で独唱テストがあり、どの科目より高得点だった。「君はいい声だね」と教師にほめられ、自分の声に興味を持った。早速、声楽たるものを習いに行ってみた。おもしろい!私は夢中になって練習した。
 この教師は、合唱部に勧誘するつもりで、私に声をかけたということを、かなり後で聞いたのだが、当時はまったく知るよしもなく・・出会いとはこんな風に不意にやってくるものだ。すでに枯葉散る晩秋になっていて『家族会議』どころではない。早速ピアノや聴音、楽典の準備をしなくては!間に合わない!





あなたがピアノを続けるべき理由②

原口美奈子(ピアノコース講師) 2015年1月


ある物事の法則に、「一万時間の法則」というものがあるのをご存知でしょうか?それは、マルコム・グラドウェル氏が提唱した法則で、偉大な成功を収めた起業家や、世界的に有名なスポーツ選手や芸術家など、何かの分野で天才と呼ばれる人達に共通するのは「一万時間」。これまでに打ち込んで来た、長い時間が関係するというものです。ピアノという習い事は、練習が不可欠です。よく、ピアノは好きだけど練習は嫌い~という生徒さんがいます。有名なイチロー選手も「僕だって勉強や野球の練習は嫌いです。誰だってそうでしょう。つらいし、大抵はつまらないことの繰り返し。でも子供のころから目標を持って努力することが好き。その努力が結果として出るのですから」と語っています。そうなのです。つまらないことの繰り返しだったり、弾けない部分を攻略するために、何度も挑戦したり…ピアノも一緒ですね。
私の大学時代の恩師は、サンタクロースみたいな風貌の愉快なチェコから来た先生でした。私の記憶の中の先生は、いつも、いつもピアノを弾いていました。先生は一万時間を優に越えていたのではないのでしょうか?レッスンの少しの合間があれば弾き、家に帰ればすぐピアノ部屋に行き、寝るまでピアノを弾いていたそうです。大学での指導に演奏活動と、いつ寝ているんだろう?と思うほど、スーパーマンのような先生でした。そんな先生に、卒業間際の最後のレッスンで「今までよくがんばりましたね。先生になってもピアノを弾きつづけなくちゃいけませんよ。」と言われたのでした。それから間もなくして、先生は天国へ逝かれました。その会話が最後になってしまいましたが、私には宝物のようにその言葉が胸に残っています。私も指導をしながらなんとかピアノを弾き続けています。ピアノを指導することで、子供たちから音楽の楽しさを教えてもらっています。私にも一万時間が訪れた時どうなっているのか楽しみです。みなさんにとっての、ピアノを続けるべき理由はなんですか?





あなたがピアノを続けるべき理由

原口美奈子(ピアノコース講師) 2014年12月


私は小さい頃からピアノを習い、音楽を学びそして先生になりました。
先生をするようになりよく大人の方との会話の中で、「私も子供の頃ピアノ習ってたんですよ〜練習が嫌で辞めちゃったんですけどね!」という声をよく聞きます。
その声を聞くたびに、私は先生としてピアノを通して何を子供たちに伝えようか?大人になってピアノを習うことを辞めても、楽しく弾き続けてもらうにはどうしたらよいだろうか?と考えます。
そんな中とても素敵な本に出会いました。『あなたがピアノを続けるべき11の理由』という本です。この中には、ピアノを辞めずに続けるという選択をした11人の方のお話が載っています。ピアノ演奏家に限らず、科学者や落語家などいろんなジャンルの方のお話で、とっても素晴らしい本でした。
どれも素晴らしいお話ばかりでしたが、その中にジェーン・バスティン(ピアノ指導者)が書いたお話で「ピアノが弾ける」ということは、「自分が特別な存在であると確信できること」という文章があります。(この内容は是非、本を読んでみてください!)
このタイトルを見て、ある生徒さんを思い浮かべたのでした。その子は心優しい性格の、そしてちょっと泣き虫ちゃんの女の子。初めて会ったのは小学二年生でした。グレードテストを控え、「テストドキドキするなぁ…恥ずかしいなぁ」とポロポロ泣くのです。手をプルプル震わせながら本番を迎えました。練習たくさんしたし大丈夫!でも心配だなぁ…と私の心の中の心配をよそに、「緊張したけど、思ったより大丈夫だったー!」と帰ってきました。その子の中でひとつの壁を乗り越えたようでした。そしてその後、レッスンの中で、女の子の音がキラキラしていたので「とても綺麗だね〜先生うっとりしちゃう(^^)」と伝えたらとても嬉しそう!どうやったらもっと綺麗な音が出るか一緒に考えました。綺麗な音がでたら、かっこいい音が出したくなったり、早く指が動かしてみたくなったり…。その度に、考えて作戦を練っているうちに「お客様の前で弾いてみよう!」と私は誘ってみました。「グレードも恥ずかしかったけど、弾けたもんね!」と。小さな壁を乗り越えた時を彼女は思いだし発表会やコンクールを経験していくのでした。
薄暗い舞台裏から彼女を見送る時、ドキドキ震えていた背中が、回を追うごとにどんどん頼もしくなっていくのです。明るい舞台に出ていく足元はとても自信に溢れていき、私にだけ聞かせてくれていたキラキラの音楽をお客様の前で演奏できるようになりました。私はピアノを通した彼女しか見たことはありませんが、小さな壁を乗り越える度に、優しくて少し気弱だった女の子が、凛として、たおやかな女の子に成長していくのを見た時、『ピアノってすごい!』と改めて思ったのでした。
そしてこの本の中に、「人は簡単に手に入るものは、簡単に手放してしまう。苦労して身につけたものは、そう簡単に手放しません。」という一節があります。
小さな壁を乗り越え、努力を積み重ねた彼女は今では中学生。バスケットボールとピアノを両立しながらがんばっています。
彼女を見ると嬉しくて、私もピアノを続けてきてよかったなと思うのでした。これからも、指導者として、ピアノを続けるべき理由をたくさん見つけていきたいですね。


基本が大事

柴田理加子(ピアノコース、ドリマトーンコース講師) 2014年10月

「守・破・離」という言葉を聞いた事があるだろうか?これは、「まず、師の教えを守り、次にその教えを突き破り、最後には師から離れる」という、茶人・千利休の教えである。「道」と名のつく世界でよく言われる言葉で、少林寺拳法でもいつも言われている。実は音楽教育に於いても当てはまる事だと思う。ピアノで例えると、まず講師の教えたとおりに基本を身につけ、次に身につけた技術を自分で使いやすいようにアレンジし、最後は自分のスタイルを完成させると言う事である。
さて、「守・破・離」の原文は「守り尽くして破るとも、離るるとても、本を尽さじ」と言う。この中の「本」とは「基本」のことである。
総じて基本はおもしろくないものだが、拳法の修練では基本を省略する事はない。基本が出来なければ応用は出来ないものである。基本をおろそかにして、いきなり自己流に走るとどこかでつまずいて先へ進めなくなってしまう事がある。音楽もしかり。
つまり、「離」に至っても「基本」は決しておろそかにしてはならない。基本を大事にしよう。




音楽と武道

柴田理加子(ピアノコース、ドリマトーンコース講師) 2014年9月

音楽と武道、この二つはあまり関係がなさそうだが実は共通するところが多い。私は音楽教室の講師だが、少林寺拳法の指導もしている。少林寺拳法にも人前で発表する「演武」というものがある。演武は演奏と同じで、技術だけでなく人を魅了する自己表現の要素が求められ、ただがむしゃらに動けばいいのではなくリズム感を必要とする。発表方法も、ピアノのソロ演奏と「単独演武」、連弾と「組演武」、アンサンブルと「団体演武」というように似ているところがあり、すべてに調和と呼吸とリズムが重要になる。競技では正確度と表現度を点数評価し、音楽での発表会やコンクールに似て芸術的である。
武道というと戦って相手を倒すための技術と思われがちだが、少林寺拳法の理念は『自分を大切にし、他人を思いやれる人づくりを目指す』ものである。カワイの教育理念も「自分を認めてこそ、他人を認めるようになる」というものがある。音楽指導も少林寺拳法も、一人の天才を育てるのではなく、個性を生かして多くの豊かな人を育てるという共通の理念を有した、人づくりの道である。そして演奏者、演武者共に、自分との戦い、自己との対話が大切なストイックな面があるものである。その自分と向き合った時間は、癒やしでもあり、力を蓄える場所でもある。
震災で「絆」が見直されたがその反面、自己の欲求のために人を傷つける悲惨な事件も多い。音楽や武道によって他人を思いやる事の出来る「絆」の人づくりをしていきたいものだ。





緊張と緩和

佐野茂靖(ソングライターコース講師) 2014年8月

メロディや和音の進行など、音楽において緊張と緩和は不可欠な要素です。
緊張と緩和の連続によって作り出される「波」があるからこそ音楽は光り輝きます。
それは音楽だけでなく、他の芸術でも同じことが言えると思います。

どちらか一方の要素だけの場合は、なんだか停滞しているような感じがするものです。
例えば時間は流れているのに物語が展開しない映画を観ているような、電車が走っているのに窓からの景色がほとんど代わり映えしないような感覚に似ている気がします。

また日常生活の中でも同じようなことが言えると思います。
毎日が仕事に追われて休みがないような状況の人もいれば、逆に安定した生活の中で何か楽しいことはないかと退屈な毎日を過ごしている人もいます。
どちらか一方の要素だけではなく、「波」が作り出すようなバランスがとれた生活をすることは、充実した毎日を過ごすことにつながるからです。

さらに視野を広げて、人生という大きなテーマで考えてみると、安定を求める人はいても、苦難を求める人はあまりいないと思います。できれば避けたいと思うものです。
しかし苦難があるからこそ、人生はより輝きを増していくのかもしれません。
その経験を乗り越えて得られるものは何よりも価値があるものだからです。

緊張と緩和の連続によって作り出される「波」があるからこそ人生は光り輝く。
音楽は私たちにそのことを教えてくれているかのようですね。





アイデア

佐野茂靖(ソングライターコース講師) 2014年7月

「人は忘れるようにできていますから、思いついたらすぐに書きとめてください。」
大学時代に卒業論文を書いている時に先生から言われた言葉です。

アイデアは瞬間です。
ふと思いついては消え、つかめそうでつかめないような、風や水のような感じです。
私は作詞、作曲のレッスンで生徒さんに良い歌詞やメロディを思いついたらすぐに記録に残すようにおすすめしています。
例えば人生の中で楽しかった思い出もそうでない記憶も時間が経てば忘れていくように、
アイデアもその内容の良し悪しは関係なく忘れてしまうものだと思うからです。

人は毎日いろいろな環境の中で無意識にたくさんの影響を受けながら生きています。
アイデアはその中から生まれて来ます。
「今」という時代の中で、自分というフィルターを通して出てきたアイデアは、一見自分のもののようで、
もしかしたら自分だけのものではないのかもしれません。

良いアイデアを記録に残すことは次のステップへの鍵となります。
アイデアは必要な時に必ず思いつくものとは限らないからです。
作詞、作曲だけではなく、皆さんもお仕事などで良いアイデアを思いついたらすぐに記録に残してくださいね。